最近の小中学校ではカリキュラムの都合上、夏休み期間を短縮して8月下旬から授業を再開する学校も増えてきているようだ。
でも私の子供時代は、夏休みの終わりと言えば8月31日のことだった。
8月31日は夏休みの終焉。
1か月以上にもわたる長期間の休みは、子供時代の自分にとっては永遠に続くかのように思われた。
宿題があるとはいえ、友達と外で駆け回り、虫取り、花火、山へ海へと、夏特有のイベントの数々に興じる日々は、ある種の現実離れをした浮遊感を伴った。
そのような日々に終止符が打たれ、再び元の学校生活に戻ることは、物語の世界から現実の世界へと引き戻されるような感覚があった。
大人になった今でも毎年8月31日がやってくると、自然と子供時代のそれらの記憶が思い出されて感傷的な気分になってしまう。
…で、その感傷的な気分と一緒によく思い出すのがこちらの著書。
9月0日大冒険 著:さとうまきこ
お気に入りの本で何度も読み返したのだが、今はどこへ行ってしまったのやら、、
主人公はクラスカースト最下層の男の子。
恐竜が好きで昔は皆から恐竜博士なんて呼ばれていたけど、今ではすっかり目立たずに「恐竜バカ」なんて呼ばれる始末。
今年の夏休みなんて、パパの仕事の都合で旅行には行けなくなるし、持病のせいでプールにも入れない。
そして、そんないいこと無しの夏休みも今日で終わり、、また明日からはつまらない学校生活が始まる。
ほんと僕の人生~!
(すみません、詳細はうろ覚えです、でもこんな感じです。)
…って感じで、8月31日の夜に憂鬱に眠りに落ちる主人公なのだが、夜中にふと目を覚ますと、部屋の日めくりカレンダーには存在しないはずの9月0日の日付が、、
そして窓の外を見ると、なんと恐竜の棲息している白亜紀の世界だった!!
…とまあ、漫画や映画なんかにありがちな展開になるのだが、、
しかし、この著書はSFやアドベンチャーというよりは、SFを絡めた青春ストーリー、成長物語といった感じだ。
物語は進行し、主人公の冴えないのび太君は、白亜紀の世界へと冒険に繰り出すのだった。
クラスメイトのジャイアンとしずかちゃんと一緒に。(スネ夫は居ない)
白亜紀という過酷な世界の中を一緒に冒険するわけだから、当然衝突や不和が起こることになる。
でもこの物語で描かれているのが、ジャイアンがただ暴力的なだけのジャイアンではなく、しずかちゃんがただ優しくて優等生なだけのしずかちゃんではないということも、著書のポイントのひとつなのだろう。
3人は普段の学校生活では知ることが無かった、お互いの側面や心情を知ることになる。
なのでこの物語は主人公の成長物語であり、そして3人の成長物語でもある。
そうして、8月31日と9月0日の間、現実と非現実の間の世界で交わされる「大人は分かってくれない」という3人の子供たちの会話、、
子供から大人への過渡期に誰もが経験するであろうこの種の葛藤は、当時主人公達と同じ年頃だった自分にも共感するところがあった。
昔は何度も読んだ本なのだが、大人になった今読み返すとどんな感じなのだろうか。
著者のさとうまきこ氏は児童書を手掛ける作家なので、少し物足りなさを感じるのかな、、
夏休みもすっかり終わって受験まであと少し、
塾通いの毎日でそれが不満なわけではないけれど、でも疲れてるのか疲れてないのかよく分かんない日々を過ごしている君には、こっちの本もおすすめだぞ。