私はきょうだいの真ん中っ子である。
「上の子はしっかり者」「末っ子は甘えん坊」などといったステレオタイプのイメージが世の中にはあるものだが、真ん中っ子についてはそのようなキャッチ―な話題性は特になく、実際に家庭内においても影が薄い。
ひとの家庭の事情はそれぞれだが、私自身はきょうだいの真ん中であることによって得をしたことは特にない。
むしろ損をしていることのほうが多いのではないかと思うのだが、しかしそんな私の思いとは裏腹に、きょうだいの他のポジションである人間からは
「真ん中っ子って親から干渉されなくて楽でいいよね~」
といったコメントをもらうことが時折ある。
「楽でいいよね」…だとう…!?
私は世間のこういった認識に対してあまり納得がいっていない。
確かにきょうだいの上や下にも、それぞれの悩みや葛藤はあるだろう。
しかし真ん中っ子にも真ん中っ子の、真ん中っ子であるが故の悩みや葛藤や損とか損とか損とかがあるんだよ!
そうだろ!?世界中の真ん中っ子のみんなーー!!!
そうだーーー!!! (エア オーディエンス)
真ん中っ子は腹黒いのか?
もうかなり以前のことだが、ある知人女性が真ん中っ子である私に対して、このようなコメントを言い放った。
「真ん中っ子ってことは、腹黒いでしょ!」
突然の正面攻撃である。
しかもかなり爽やかな笑顔で。
…ええ~?
は、腹黒い…??
なんか突然すごい爆弾投げつけられたよ!
しかも攻撃が唐突過ぎて、負傷の数秒後に痛みが来る感じ!!
私が返答に困って「あ…あ…」とあわあわ言っていると、彼女は続けてこう言った。
「私も真ん中っ子なんだよね。」
ええ~~???
突然に展開され始める、真ん中っ子による真ん中っ子のための「真ん中っ子腹黒い論」。
…彼女の主張によると、真ん中っ子はきょうだいの中で一番放っておかれやすいポジションで親からの愛情が薄く、手を掛けられていないのにも関わらず何事もそつなくこなさないと叱られるという、何とも損な役回りらしい。
日頃そのような境遇なので次第に親の顔色をうかがうことを覚え、常に場の空気を読み、何かと計算をしてから行動することを身に付けていく。
だから腹黒い。らしい。
なるほど~…
私はそれまで真ん中っ子であることについてそのように理屈で考えたことが無かったので、彼女の主張によてってそれまでずっともやもやと感じていたことについて何か腑に落ちたような感覚だった。
確かに周囲の真ん中っ子たちの話を聞いていると、真ん中っ子の立ち位置というのは、きょうだいの中でも家族の中でも少々微妙なようである。
よく聞くのが、きょうだいの上と下の仲が良くて、真ん中っ子はひとり浮くことが多いという話。
あまり歳が近いとライバル関係にもなりやすいので、年の離れたきょうだいが仲良くなることは自然な流れではあるかもしれないが…
しかし希薄になるのはきょうだいの関係だけではなく、他のきょうだい達に関心が移りがちな親との間にもある種の距離感が生まれるらしい。
個人的には真ん中っ子という立場は、「上のきょうだいと下のきょうだいの悪いとこ取り」といった感じがする。
きょうだいの上の立場と下の立場の両方を経験することになるが、親からはその時の状況によって「下なんだから我慢しなさい」「上なんだから譲りなさい」と、都合のいいポジションを割り振られる。
真ん中っ子本人からすれば、他のきょうだい達と同じように上の立場や下の立場の特権を主張したいところだが、親からすれば優先されるべきなのは上の子や下の子の特権についてらしい。
幼いうちからすでにこの世の理不尽の縮図を味わう日々…。
そしてこれもお約束のことだが、洋服や玩具は常に上の子のお下がりになる。
さすがに下の子まで回すのには状態が悪すぎるので、お古を使わされるのはいつも自分だけ…。
親からの関心が薄く、しばしばおざなりな対応を取られることが多い真ん中っ子は、欲しいものが必ずしも手に入るとは限らないということを幼いうちから早々に悟ってしまう人間が多い。
望まずとも親が何かと気に掛けてくれる上の子とも、甘えれば親が言うことを聞いてくれる下の子とも違い、真ん中っ子は常にその場の状況と人の顔色を観察し、自分がどう行動をするべきかを考えるようになる。
確かにそういった意味では真ん中っ子は腹黒いのかもしれない。
どのように育つかは親次第…?
世間でよく耳にする真ん中っ子の特徴を挙げると次のような感じになる。
★承認欲求が強く努力家で負けず嫌い
★放っておかれたために自立心がある
★干渉されるのが嫌いな単独行動好き
★場の空気を読んで周囲に対して気を遣う
★面倒見がよく、誰に対しても人当たりがいい
★要領がよく世渡り上手
真ん中っ子は親からの干渉が少なかったために、のびのびと自由奔放で行動的な人間に育つ傾向にあるという。
しかしそれとは逆に、親からの関心が薄かったために、常に周囲の視線を気にして人に気を遣う抑圧的な人間になるとも言われている。
対照的な2パターンの人間だが、元を辿れば同じきょうだいの真ん中というポジションの人間である。
きょうだいの上と下と、どちらからも縛られているとも解放されているとも言える立場において自分をどのように発展させれれるのかは、普段の親の言動や接し方、本人の性格にもよるだろう。
色々と理不尽な押し付けをされることも多い真ん中っ子だが、せっかく与えられた自分のポジション、上手く人生のプラス材料にしたいものだ。
親やきょうだい達からは何かと都合よく顎で使われることも多いが、もしも家の中で窮屈を感じているのならば、家族のことは気にせずにどんどんと外の世界へ出ていって色々な人間と交流を広げればいい。
大丈夫!
家に自分がいなくてもきっと家庭内は平常運転だから!!(自分も家族も)
今こそ他のきょうだい達の一歩上を行った、自分の腹黒い才能を世界に対して発揮するべきなのだ!
世界中の真ん中っ子たちの幸あらんことを願う…!