意外に古いプラセンタの歴史…プラセンタとは一体何なのか?

最近になって美容業界で注目を浴びている「プラセンタ」。

美容品や健康食品の広告などでやたらと目にするようになったが、知らない人間にとっては「急に現れたこのプラセンタとは一体何なのか?」といったところだ。

念のために書いておくと、「プラセンタ」とは「胎盤」のことだ。
コラーゲンやビタミンなどのような、特定の成分のことではない

医療現場で使われているのは、ヒトの胎盤から成分を抽出した「ヒトプラセンタ」である。
一方、美容業界で使用されているのは、ヒト以外の胎盤を使用したプラセンタで、「動物性プラセンタ」「海洋性プラセンタ」「植物性プラセンタ」など、様々な種類がある。

 

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プラセンタはゲテモノ?

野生動物には産後に自らの胎盤を食べるという習性があるが、それは血の匂いで天敵を寄せ付けないためとも、出産後に栄養分を補うためとも言われている。

それは自然の理に適ったことなのだが、しかし人間が胎盤を口にするとなるとやはり抵抗があるものだ。
加えて、「胎盤を利用するなどとは非科学的で非人道的な治療だ」といった意見もある。

しかし「胎盤食」は、中国では「紫河車(しかしゃ)」という漢方薬として何百年も以前から存在していたのだ。
れっきとした漢方治療として存在していると知ると、日常的に漢方薬を服用することのある私にとっては、急に親近感の湧いてくる事実である。

漢方治療は近代の西洋医学の発展に伴い、日本においては明治以降に、西洋からの新医学の波に押されて急激に廃退していったという過去がある。
しかし最近になって改めて漢方薬の効能が見直されているという流れからは、胎盤治療においてもまた、同様の現象が起きていると言えるのかもしれない。

とはいえ、まだまだ周囲からの認知度や正しい理解については乏しくもあり、豚や馬などの動物性プラセンタであれ、「胎盤」と聞くと怪訝な顔をする人も中にはいる。

しかし日本人について言えば、普段から日常的に鶏の肝や牛のタン・魚の白子など、実に様々な動物の部位を食すので、何も胎盤に限って「ゲテモノ」と見なすのはいささか偏見であるだろう。

プラセンタの歴史

プラセンタは漢方薬にも使われているが、しかし現在のプラセンタ治療やサプリメントの起源が漢方薬であるというわけではない。

プラセンタは遥か昔より、実に多くの歴史上の有名な人物たちも愛用していたのだ。

上記の他にも多くの記録や言い伝えがあるのだが、しかし記録が残っていないものに関しては、「使っていたらしい」というお話なので、真偽のほどは定かではない。

しかしこのような言い伝えが多く残っているということは、「胎盤には何やら不思議な力がある」といった事実が広く世界各地に伝承されているためなのかもしれない。

 

プラセンタを用いた治療は古代から存在していたということだが、それは1930年代にロシアのフィラートフ博士が「胎盤埋没療法」を研究してからは、飛躍的な進歩を遂げることになる。

プラセンタは非科学的?

フィラートフ博士の研究した「胎盤埋没療法」とは一体どのようなものかというと、被験者の皮下にヒトの胎盤を埋め込むという、なかなかトンデモな治療法のことなのである。

しかしそんなセンセーションな治療法であるのとは裏腹に、結果としては被験体に驚くべき有効性を発揮したというのだから驚きだ。

そしてその「胎盤埋没療法」はロシア以外の国々、日本にも普及していき多くの研究がなされたのだが、それは結果として後々に、その効果を応用したプラセンタ美容法にも繋がっていく。

疾患に対して様々な改善・回復を促し、「万能性」ともいえる効果を発揮したプラセンタ療法だが、しかし様々な研究がなされてきた現在でも、いまだになぜそのような有効性があるのかが明確には分かっていないらしい

…それが事実であるのならば、かなり衝撃的な話である。
今まで長きに渡って治療が行われ、そしてまた多くの患者の病気の改善を実現してきた治療法の、有効性の「科学的根拠」が無いというのである。

プラセンタの中のどの成分が疾患に対して効果的に働きかけているのかがいまだに判明していない、ということなのだが、しかしこれは漢方薬においても同様のことらしい。
…二度目のビックリである。

例えば、ある種類の漢方薬の中から体の働きに作用を及ぼす特定の成分を取り出して服用しても、元の漢方薬をそのまま服用するのとは同じ効果は得られないそうなのだ。
成分の単体だけを取り出しても同様の効果が得られないということは、生薬の中に含まれるいくつかの成分が相互に作用し合うことによって、効能を発揮しているということなのだろうか?
(生薬=動植物・鉱物から有効成分を精製することなく、そのまま、または性質を変えない程度に粉砕・細断などの加工をした薬剤のこと)

もうこうなると、ビックリを通り越して不思議である。

現代においては、「科学的」な根拠がはっきりとしないものについては、信用できないものと見なされる。
私も漢方薬を常用したり、プラセンタサプリメントで効果を実感していなかったら「怖い」と思うのかもしれない。

しかし漢方薬というのは、昔から長きに渡って研究が繰り返され、立派な論理的体系を持つ「漢方医学」が作り出した薬剤であり、最近では確かに効能のあるものとして西洋医学の現場でも薬の併用がされているのだ。
この事実を「非科学的」という言葉ひとつで一蹴するのは、少々軽率ではないのか?

プラセンタにおいても、確かに効能があるという重要な事実があることに変わりはないのだから、将来漢方薬と同じ道を辿らないとも言えないのではないだろうか。

研究としては、「どの成分が有効であるのか?」ではなく、「それを投与した結果、どのような効果が現れるのか?」を検証していくという形になるのだという。
実際に有効性を確認したそれらの臨床結果は、これまでにも数多く報告されているということだ。
(参考記事:プラセンタ療法は医療従事者の間でどうしてあまり知られていないのか?)

しかしなぜその報告を私たちはネットなどから容易に探し出すことができないのか。
それが医療従事者たちの間でしか公開されていないものなのかもしれないし、あるいは専門家でない人達が大量生産した「プラセンタは効果なし!」などの記事群に埋もれてしまっているせいなのか…

しかし、豚プラセンタや馬プラセンタについてはまだ研究の日が浅いせいなのか、あまり成果報告がされていないようである(有益な成果が出れば美容業界がこぞって報告すると思うので…)。
ヒトプラセンタと他の動物のプラセンタとの効能の違いも気になるところである。

しかし報告が少ないとはいえ、それはまだ研究の発展途上であるためなのかもしれないし、今後また新たに何らかの有効性が解明されるかもしれない。
「科学的」にしろ「非科学的」にしろ、プラセンタには確かな効果があり、多くの可能性を秘めているということには変わりないのだ。

プラセンタは「美容に効く」ものではない

最後に、プラセンタがもともと医療現場で治療のために用いられていたという事実からも分かると思うが、プラセンタとは決して肌質の改善にピンポイントで効果があるものではない。

病気の患者にプラセンタを投与した結果、疾患の改善と共に肌などのコンディションもよくなったという結果から、美容業界でも注目を集めるようになったようだ。

体内の状態によって肌質が変化するという話には耳が痛くなるのだが、確かに仕事の疲れや寝不足・眼精疲労や食生活の乱れなどから肌の状態が悪くなるという事実は否めない。

手っ取り早くサプリメントを服用してしまいたいところだが、それよりもまず最初に自身の健康状態を見つめ直してみることが大切なようだ。